サボテンに花が…… | |
そりゃあ植物だし。珍しいかな? | |
ちょっとね。トゲの印象しかなかったし | |
『美しい花にはトゲがある』って言うじゃない | |
……それってバラ目線の話よね | |
バラ目線? | |
トゲがあるのはバラくらいなのに、美しい花を代表して諺にするなんて | |
一言で言えば傲慢。きっとバラ派の陰謀よ | |
……なるほど | |
じゃあ、サボテン目線だと? | |
『鋭いトゲにも花がある』 | |
やった! ハモった | |
……屈辱ね |
Oh! オアシス! 命の泉! | |
お前は荒れ地に生まれた女神! | |
なんだそのテンションは!? | |
水の天族ならわかるだろ、ミク坊! この水のありがたさが | |
わかるが……それほどでは…… | |
いいんだぜ、ライラ! 火の天族の火照った体を投げ入れちゃっても | |
遠慮しますわ。清らかな泉ですが…… | |
んじゃ、エドナちゃん! | |
地の天族を代表して、一緒に飛び込もうぜ! 最高の大地の恵みに! | |
空気読めないのね。風の天族のくせに | |
今の……地味にグサっときた | |
涙を拭きなさい。この命の泉で | |
……そうするわ |
見て! 光るキノコ! | |
ジメっててキモいけど……ちょっと幻想的 | |
でも不思議ですね。なぜ光るのでしょう? | |
もう教えてもらえないね | |
………… | |
どうした? ザビーダ兄さんに聞いてみな? | |
なんでコイツは光ってるわけ? | |
なんだキノコのことなんざ―― | |
知らないの? 知らないのね? | |
『目立ちたがり』だからだ! | |
3点ね。1000点満点で | |
低っ! | |
間違っちゃいないだろ? 引っ込み思案なら光ったりしないって! | |
くだらない言い訳でマイナス20点 | |
ぐわっ! 0点以下に!? | |
あははは! | |
ただの『目立ちたがり』じゃないよね | |
そう思いますわ。私も |
変わったものを売っているな。人形の中に人形が入っているなんて | |
そうか? 北の方でよく見る民芸品だが | |
これはもしかして……人と天族の関係を表しているんだろうか? | |
おいおい、そこまでマジに考えるなって | |
だが、わざわざ奇妙な仕掛けをつくったんだ。なにか意味があるはずだろう? | |
確かに。だとすると、天族の中にさらに人がいる意味はなんだろうな? | |
それは……天族の中にある人格を示している? | |
いや、天族を器と見せることで、逆説的に人と天族の共存を暗示しているのか……? | |
ザビーダ、一番最後の人形には何が入っているんだ? | |
ああ、確か……ウメボシのタネが入ってる | |
ウメボシのタネ!? | |
う〜ん……もちろん象徴だろうが、タネとは再生の印だろうか? | |
そもそも前提となるウメの意味は…… | |
いやあ、わかるわ。エドナちゃんがミク坊をイジる気持ち | |
でしょ。ある意味スレイよりピュアだものね | |
実に哲学的だ……深いな…… |
それにしてもこの石碑、どういう仕組みで大地の記憶を再生してるんだろう? | |
ここが地脈が吹き出す場所だからじゃね? | |
地脈? | |
ややこしい説明は、地の天族様にお任せ | |
地脈は『大地に流れる自然そのものの力』よ | |
そう! ローグリンは、大昔から地脈が強く交わってる場所なんだよな | |
知ってるなら言わせないで | |
言わせたくなっちゃうのよ、カワイイ子には | |
なるほどな | |
その地脈に大地の記憶が反応してる……ってことか | |
ん〜? もっとわかりやすくプリーズ | |
ええっと…… | |
例えると、ここから水が噴き出してる。大地の記憶は、水車みたいなもの | |
水車が回ると、小麦をひくみたいに記憶が再生される仕掛け、って感じかな | |
オッケー! 納得! | |
……けど、なんで大地の記憶が水車みたいになってるわけ? | |
それは―― | |
地脈は大地に属する力って言ったでしょ | |
そうか。大地の記憶をつくったマオテラスが、大地そのものを器にしてるなら―― | |
マオテラスの意志がそうさせているのかもしれないな |
白の中に赤いのがひとつ! | |
風情があるねえ。俺は逆がいいけど | |
なぜ一輪だけ赤いんだろう? | |
紅一点っていうからじゃない? | |
それで納得できるのがスゴイな…… | |
じゃあ、さぱらん。調べて見たら? | |
そうだな。地質に差があるのかもしれない | |
頑張れよー。それ吸血植物だけど | |
先に言ってくれ! | |
男は傷ついて大人になるんだぜ、ミク坊 | |
拒否するよ。ザビーダみたいな大人になるのは | |
血を吸って赤いのか。あたしと同じだね | |
あん? 同じって? | |
『血の花を咲かせる』って意味なんだよ。『ロゼ』って名前は | |
さらりと怖いことを聞いてしまった…… | |
女の怖さを知ってみんな大人になる……覚えとけ |
この形、足あ―― | |
言わなくていいわ。言うと出てくるパターンよ | |
足跡だよね。これって | |
言うなって言うと言うパターンなのね! | |
すかすパターンみたいだな | |
どうでもいいわよ | |
で、この池はやっぱり? | |
足跡だろうな。ドラゴンか巨人かデカ足憑魔の | |
でも、ずいぶん古いものみたいだ。今、ここにいるってわけじゃなさそう | |
こんなデカブツ、ここ以外でも会いたくないけど | |
あらためて見ると不思議だよね | |
ああ。人がこんな巨大な憑魔に変わるなんてな | |
思うんだがよ。元々俺らはドラゴンサイズの欲望を抱えてて、抑えこんでるだけなのかもな | |
それが吹き出して憑魔が生まれるとしたら、あいつらは俺たちの『心そのもの』ってことだ | |
そう考えると納得できねえか? 憑魔がいくらデカくても | |
あん? おかしなこと言ったか? | |
ううん……まともすぎてビックリしただけ | |
なんかごめん | |
柄にもないことを言ってひかれるパターンね | |
ひでえ!? |
……悲しい姿ですね | |
どこが? 別に普通でしょ? | |
でもツタのせいで木が…… | |
枯れちまってるな | |
ツタは成長するために木を利用した。でも、そのせいで光が遮られて木は枯れてしまった | |
よくあることでしょ。こんなの | |
だから悲しいのです…… | |
あ。もしかして、これに天族と導師の関係を見ちゃってるわけ? | |
はい…… | |
はあ? どれだけナイーブなのよ? | |
わかってはいるのですが…… | |
困るわね。主神がそんなことじゃ | |
そうですよね…… | |
スレイが枯れたら、あなたのせいかも | |
はい | |
逆に見習ったら? 枯れるまでツタを支えた木を | |
導師って花を咲かせたいなら | |
はい……え? | |
励ましてんだよ。エドナちゃんは | |
解説はいらないわよ |
なんかイイ感じの鏡 | |
素敵ですね。華やかさの中に、しっとりとした品があって | |
わかるよね。持ち主がどんな人か | |
こんな遺物が残ってるなんて、ここは完全に未盗掘なんだな | |
はいはい。スレイはそういう反応ね | |
埋葬されてるのは女性かな | |
多分、その鏡の持ち主でしょうね | |
あ。やっぱりここ、お墓なんだ…… | |
これ、戻しておこっと | |
それがいいですわね | |
そういえば……天族って鏡に映るの? | |
いえ……普通は映らないのですが、集中すると映ってしまうんです | |
霊応力のない人にも見えるのか! | |
不思議なことに | |
すごい! それを利用したら人と交流できるんじゃ―― | |
それは難しいと思いますわ | |
ものすごい集中力が必要なので、映るだけで精一杯かと | |
そうなんだ…… | |
でも、鏡だけに映るオバケの噂、よく聞くよ | |
アレって天族だったんだね | |
はい。お化粧の時集中しすぎて映ってしまうみたいで…… | |
お化粧の時!? | |
お化粧の時!? | |
だって……女子ですから |