| ………… | |
| まだ起きているのですか? | |
| ああ。考え事をしてたら眠れなくなって | |
| 思春期なのね | |
| エドナのせいだよ。前に言ったろ。天族には二種類あるって | |
| ええ。天族として生まれた者と人から天族になった者 | |
| 人が天族に転生することがあるわけだな | |
| エクセオやパワントがそうでしょ。元は人間だったって | |
| 修行を積めばできるのか? それって | |
| 確立された転生の技術があるわけではありません | |
| ただ、純粋な心をもった人の魂が導かれ、天族として再生すると伝えられています | |
| 修行は純粋な心を得るための方法でしょ。ミイラになるのが純粋かどうかは置いといて | |
| 再生すると、天族の赤ん坊が生まれる? | |
| いえ。生前の姿をした天族として『出現』するんです | |
| 人間だった頃の記憶はなくなるみたいだけど | |
| それは、もう別の人物だと思うが…… | |
| 基本はそう。天族であって人間じゃないもの | |
| それでも、人だった頃の性格や嗜好、大切な想いは受け継がれると聞きますわ | |
| なるほど。天族も不思議な種族だね | |
| そうですね。改めて考えると | |
| ライラはどっちなんだ? | |
| 私は…… | |
| すみません。覚えていないんです | |
| 女性天族にそれを聞くのはマナー違反よ | |
| そ、そうなのか!? | |
| 完全にセクハラ | |
| すまない、ライラ! 知らなかったんだ | |
| いえ、別にそんなマナーはありませんけど | |
| 人間だったら転生できそうね。ミボは | |
| エドナ〜! |
| ディスカバリーが結構埋まってきたな | |
| スレイさん、遺跡探索もよろしいですけど、それにかまけてのよそ見が過ぎますわよ | |
| そう……かな? | |
| よそ見をしてると曲がり角で知らない人と、どーんっつってぶつかる事態になりますわ | |
| そんときのための緊急回避っしょ。華麗にバックステップ! | |
| ロゼさんそこはサイドステップですわ | |
| そうだそうだ。そこから連携すれば、スタン率アップだしね! | |
| その知らない人、災難過ぎだと思う…… |
| 『異形の宝珠』も結構集まったな | |
| 変異憑魔を倒すことで得られる宝珠のことか | |
| あの宝珠を持つと、自身の持つ能力以上の力を発揮できる代わりに、姿をも変えてしまう恐れがあります | |
| 捨てるか壊すかしたほうがいいのかな? | |
| 私が悪しき力を封じていますので大丈夫でしょう。人の手に渡っても悪影響を与えてしまうものですし | |
| なにより、ただ壊すだけでは、辺り一面穢れだらけになってしまいますわよ | |
| 結果、トラブルの解決にも繋がるし、回収できたらしていく、ってことでいいんだな? | |
| はい。もちろん、変異憑魔は強敵揃いです。勝てないと判断したら、退く決断も忘れないでくださいね | |
| 了解 |
| ザビーダは、なんで憑魔を殺すわけ? | |
| こりゃまたドストレートな質問で | |
| 誤魔化すような問題じゃないでしょ | |
| 確かにそうだ | |
| つまり、それが俺の流儀だからさ | |
| 殺すことが……ですか? | |
| そうなっちまうこともある | |
| 浄化しようとしてもできない奴がいるもんね | |
| ああ。元に戻せない憑魔もいる | |
| それでも……スレイさんは元に戻す方法を見つけると約束したんです | |
| エドナさんと | |
| ……導師らしいねえ | |
| ま、それが見つかんなかった時にケジメをつけるならかまわねぇさ | |
| ケジメか…… | |
| 殺すということですわね | |
| ちょっと違う | |
| 答えを出すってことさ | |
| ! | |
| 今いいこと言ったぜ〜、俺様 |
| …… (寝ている) | |
| 人間が背負うには、あまりに辛いことが重なっちまったかねえ | |
| 私が連れ出さなければ……いえ、詮無きことですわね | |
| 苦しいことがイヤなら、部屋に閉じこもっていればいいわ。『外』に出たのは彼らの意志よ | |
| ああ。別に誰かに責任を取ってもらいたいなんて思っていないさ。スレイも、ロゼも | |
| コイツらすっかり天族との生活に慣れきっちまってるみたいだが、最初っからこうなんかい? | |
| スレイと僕は赤ん坊のころから一緒だったからな | |
| ……ミクリオにも小っさいころがあったのかい? | |
| 失礼だな! | |
| 悪い悪い。さぞかし小さいころは、素直でよい子だったんだろうなあ | |
| 悪いね、今は素直じゃなくて |
| スキ、キライ、スキ、キライ、スキ…… | |
| なにを占っているのですか? | |
| いやぁ、俺、途中参加だろ? しかも、さんざん意地悪したしよ | |
| あいつらに嫌われてるんじゃねぇかな、って | |
| それで結果は? | |
| そりゃもちろん…… | |
| キ・ラ・イ・だとさ | |
| スレイさんたちは、そんな方では | |
| ああ、導師だもんな。けど、それが優等生すぎる | |
| だから俺みたいなのがいる意味があるのさ。例え嫌われようと | |
| 私も占ってみますわ。ザビーダさんが私たちの仲間かどうか | |
| 折り紙の花? それじゃ花びらは一枚…… | |
| ザビーダさんは私たちの―― | |
| 『仲間』と出ましたわ | |
| ………… | |
| 所詮は占いだぜ? | |
| 大丈夫。私の占いは当たりますから |
| ザビーダさん。お願いがあります | |
| なんだい? 怖い顔して | |
| いいかげんに服を着てください! その格好は教育上、よろしくありませんわ | |
| そうしたいのは山々なんだが、これが俺の誓約でさ | |
| そう……だったのですか!? | |
| ああ。それが俺が一人旅できた理由さ | |
| 誓約を課してるのが自分だけと思わないことね | |
| まさかエドナさんも? | |
| そうよ。お兄ちゃんが山から出ないように―― | |
| 毎日ピーナッツを年の分だけ食べてる | |
| 俺も、肌を焼いて一月に一枚脱皮しないとダメでさ | |
| あ。デゼルも、歯をヤスリでギザギザにするのが誓約だって言ってたわ | |
| どこまで本当かわかりませんわね…… | |
| くくく、ライラには言われたくないねえ | |
| そういうものでしょ? 天族の誓約って | |
| はい。真実は各々の心に | |
| それが誓約ですわね |
| ……とうとう手を下してしまったか | |
| いやあ、ほれぼれする一撃だったな! 二人の覚悟がこもっててよ | |
| 今回はとめなかったな……ロゼは | |
| ん? 前はとめたん? | |
| ああ。どうしても浄化できなかった枢機卿を殺したのはロゼだった | |
| 『スレイの仕事は生かすこと。あたしの仕事は殺すこと』と言って | |
| くくく、らしいな | |
| もちろんロゼに手を汚して欲しかったわけじゃない。でも、なぜ今回は―― | |
| スレイは、答えを出した。ロゼは、その力になりたいと思った | |
| なにも変わってないだろ? そういう意味じゃ | |
| ……その通りだな | |
| ロゼの方がスレイのことを、よく考えているのかもしれない | |
| つっても、本当のところは本人に聞かなきゃわからないがな | |
| いや。聞く必要はないよ。僕が信じればいいことだ | |
| そうかい |
| 最終決戦を前に、団結を高めるためにしりとりしようぜ | |
| 唐突にも程があるだろ…… | |
| 時計回りで行くぜ、まずはオレから…… | |
| くそっ! 『る』はもうないぞ! | |
| ミクリオも脱落したか…… | |
| すぐにめんどくさくなったエドナはともかく、これでライラとザビーダの一騎打ちね | |
| でしたら『ルズローシブ・レレイ』 | |
| えっそれアリなの…… | |
| 『いりごま』 | |
| 『マントヒヒ』 | |
| 『火だるま』 | |
| む… | |
| マオ坊の名前を言わせる気ね…… | |
| まつたけ! | |
| けんだま! | |
| マスカット! | |
| トラウマ! | |
| マカロニ! | |
| にらたま! | |
| まんじゅう! | |
| うらやま! | |
| なんという名勝負… | |
| これが長年生きた天族のみが出せる凄味ってものよ | |
| 長年ねえ…… |
| なんか微妙な性能の装備品を見つけたわけだけど | |
| この価値がわからないとは、ロゼちゃんも商人としてはまだまだ青いねえ〜 | |
| おょ? あたしに商人道を語るかね? | |
| 確かに見た目も性能も名前も微妙だが、これは同種の装備品全てと融合することが可能なわけよ | |
| でも……お高いんでしょう? | |
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| 結局へっぽこなんかい | |
| しかも! 10回融合してから地の主のもとへお越しいただくと、ななななんと! | |
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| それ他の装備と一緒じゃん! |
| 異形の宝珠、36個も集まっちゃったね | |
| あー、これねー。結構昔からあるいわくつきの品だな | |
| 憑魔を喰らった穢れを凝縮して生み出されたって、聞いたことがあるわね | |
| 歴史の中で狂人と言われた有名人も、紐解いてみりゃこいつのせい、ってオチになってたりな | |
| 人の性格を変えたり、憑魔化しちゃうってこと? | |
| 霊応力のない人間には見えないから、本人が知らないうちに巻き込まれることもあったみたい | |
| 憑魔が持った場合、穢れが過剰に供給され、普段見かけない『変異憑魔』になっちまうってわけだ | |
| 何でそんなものを創ったんだよ…… | |
| 浄化以外で、憑魔を減らす方法のひとつよ。人間が浄化の力を持つなんて、まずないし | |
| 昔は今より、天族や憑魔が見える人間も多かったからな〜 | |
| 人間が憑魔から人々を守る為に、止むを得ずとった手段ってこと……? | |
| いわゆる『対処療法』ってやつさ。不幸を先延ばしにするためのな。ま、人間には『今日』が大事ってわけ | |
| その時の状況も知らずにあーだこーだ言うのは、おかしいか。あたしも『明日』のために生きよっと | |
| ……アナタたちはそれでいいんじゃない? |
| アユの塩焼き、美味しかったなぁ〜! | |
| でも、ただ塩ふって焼いただけなのに、これを料理って言うのかな? | |
| 確かにスレイさんの言う通り、焼いただけではありますが | |
| あの絶妙な塩加減と火の通し方……素材そのものの良さが上手に引き出されていましたわ | |
| 素材の旨味を最大限に引き出せるかどうかで、味の良し悪しが決まる | |
| アユの塩焼きも、歴とした料理ってことだな | |
| そうだね。何気なく食べてたけど奥が深いんだなあ | |
| そう。それに、ここのアユは、豊かな水源に育まれたレディレイクの名産品だからな | |
| 先々の人、天族に守られてきた証。いつまでもこの美しい自然を守っていきたいよ |
| さっき食べた肉じゃが、味が染みててうまかったな〜 | |
| ああ。初めて食べたがとても美味しかったよ | |
| ええ!? 初めてって……。でもそうか | |
| アリーシャはいつもすごいご馳走を食べてるんだよな? ブウサギの丸焼きとか高級なフルーツとか! | |
| そんなご馳走を毎日食べているわけじゃないよ。確かにいつも食べている料理も美味しいが | |
| それ以上に、仲間とわいわい食事をとることが、こんなに楽しいなんて思わなかったよ | |
| 幸せというのは、こうした日々の生活の中にあるのだな | |
| うん。おいしいごはんをみんなで食べる! ホント幸せだなってオレも思うよ | |
| ふふふふ | |
| あははは | |
| ふぁあ〜。お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった | |
| 明日もあることだし、部屋に戻ろうか | |
| ああ。そうだな、おやすみ | |
| おやすみ〜 |
| ぐ……うぬぬ…… | |
| おおっ。いいにおーい! この美味しそうな、においは牛肉の赤ワイン煮込みですなー! | |
| って! ちょ、デゼル何して―― | |
| (し―――――!!!) | |
| (え!? な、なに!? どうしたの?) | |
| (デゼルのやつ、さっきからああして鍋に向かってペンデュラムをかざしてるんだ) | |
| (ていうかなんであいつ厨房に立ってるわけ?) | |
| (愛情をたっぷり注いでるとか?) | |
| (注ぎ方が間違ってるし、そもそも愛情って感じしないだろ!) | |
| (まさか呪い……) | |
| (……!) | |
| ……クソッ!! | |
| この味……くやしいが今の俺には再現できん……! くっ……! | |
| …… | |
| ……何? | |
| この店の牛肉の赤ワイン煮込みのレシピを調べていたようですわね | |
| 料理に相当なこだわりがあるようね | |
| そう言われると、食事の時、やたら味わって食べてる時があるような…… | |
| デゼル、どこを目指してるんだ……? |
| うう……今日のご飯は…… | |
| 育ちざかりの僕たちにはツライな…… | |
| 育ちざかりじゃなくても、さすがにこの味気ないメシは、なぁ | |
| たまには健康的なご飯でも、と思って選んでみたんですけど | |
| あまり好評ではないようですね | |
| 健康的なのはありがたいけど、ちょっと健康的すぎるかもねえ | |
| そうだな〜。歯ごたえないし、味薄いし、あんま食べた気にならないよね | |
| ちょっと極端なディナーではあるな | |
| ……そこまで言われると、いくら一緒に旅をする仲間でも傷ついてしまいますわ | |
| 毎日毎日、みなさんの健康とお財布事情に気を付けて管理していましたのに…… | |
| あわわわ!……別に責めているわけじゃないよ! な、ミクリオ、ザビーダ! | |
| そ、そうだよ。ライラがいつも僕たちのことを気にしてくれてるのは分かってるよ | |
| 感謝してる。ありがとう! | |
| そーだよ。その心遣いはありがたいぜ。やっぱライラが傍にいてくれてよかったなあ! | |
| それは良かったですわ! | |
| じゃあ私もお代わりを…… | |
| 結局、お前が食べたかっただけじゃないのか!? |
| ふぅ〜。食った食った! 幸せ~! | |
| げぷ | |
| ロゼさぁ、ほんとそれ良くないよ | |
| 女性としての前に人としてどうかと思う | |
| 食べるのが早い。落ち着いてゆっくり食え | |
| シチューなんて飲み物だよ。落ち着いて食べたって時間かからないもん | |
| ならせめてげっぷはやめてくれ | |
| 何よりもまずシチューは飲み物じゃない | |
| 時間をかけて素材の旨みを抽出し、それを凝縮したものだ。ちゃんと味わって食え | |
| 味わって食べてますー。いちいち小言がウルサイ! | |
| ……まったく。あれこれ奔放なやつだ |
| サボテンソテーだって | |
| よくこれを食べようと思ったね〜 | |
| でも意外と美味いな | |
| このあたりはそもそも人が食えるモンが少ねぇからな | |
| ま、先人の知恵ってとこじゃね? | |
| ホント人間って大変ね | |
| 食べないと生きていけないのに、食べるものがないなんて | |
| だからこそ知恵を絞って生活する必要があるんですわ | |
| 天族だってそうです。結局のところ、天族だけの力で生きているわけじゃありませんし | |
| そうだね。お互い必要な存在なんだから、協力しあえる関係が自然に築けるといいんだけど | |
| なぁ、ミクリオ | |
| 今までスレイとの生活が当たり前だったからな。あんまり意識したことなかったけど | |
| きっと昔はそれが普通だったんじゃない? | |
| そうですわね。また、昔のような関係を取り戻せるといいのですけれど | |
| そのためにオレたちが頑張らないと、だね |
| スレイさん、好きなんですね。バニラソフトクリーム | |
| 昔からミクリオが作ってくれたのを、よく食べてたからね | |
| ミクリオ様がスレイにおやつを作っていたのですか!? | |
| スレイは、天遺見聞録を読み出すとすぐ夢中になるから、僕が作ったものを強引に食べさせていたのさ | |
| なるほど。ふふ、目に浮かんできます | |
| それならちゃんとした料理も作ってくれればよかったのに | |
| しかたないだろ。子どものころは一人で狩りが出来なかったんだから | |
| ふふふ。二人は本当に仲がいいですね |
| これでよし、と | |
| さぁ、とける前に召し上がれ | |
| フルーツフラッペですね。盛り付けがとてもきれいです | |
| さすがは水の天族ですわね。私だと、こうは行きません | |
| ですが、ライラ様も作っていらっしゃいましたよね? | |
| はい。焼菓子は得意なのですが、冷たい物はちょっと…… | |
| なるほど。ライラ様は火の天族だから焼菓子が、ミクリオ様は水の天族だから冷たい物が得意なのですね | |
| 天族にも得手不得手はあるんだよな | |
| たしかに僕も焼菓子の火加減は苦手だ | |
| そうそう。ミクリオは昔からボアの肉を焼く時に、火加減を間違えて黒コゲにしてたもんな | |
| そんな昔の事をまだ覚えていたのか! そもそもあれはスレイが自分で火を起こさな―― | |
| あの〜、お話するのはいいのですが | |
| 早く食べないと全部とけてしまうのですが…… | |
| あ! | |
| ミクリオ様はアイスキャンディーを簡単に作ってしまわれるのですね | |
| 僕は水の天族だからね。これくらいなら朝飯前さ | |
| 冷たい食べ物は全て高級品なのです。冷やすための氷を入手する事が難しいですから | |
| この程度で良ければまた作ってあげるよ | |
| 本当ですか! ならば私にも作り方を教えて頂けないでしょうか? | |
| あ、あぁ。僕でよければ | |
| ありがとうございます。まずは氷ですが、天響術以外で入手する方法はありますか? | |
| うーん、水を凍らす方法以外だと思いつかないな | |
| そうなのですか。そうなると私には難しいですね | |
| だったら一緒にいる時は僕が氷を用意するから、次のフルーツ果汁の作り方から覚えよう | |
| そうすれば、氷を入手できさえすれば、アリーシャ一人ででも作れるようになるさ | |
| わかりました。料理などしたことない私ですが、一人前に作れるよう精進していきます | |
| さぁ、ミクリオ様、オレンジを! 私の槍で見事に切り下して見せましょう | |
| そもそも料理に槍は使わないんだが…… |