ちょっとみんな集まって | |
どうしたんだ | |
こんなものを見つけたの | |
手紙ですか? | |
『一筆啓上。盟約の時はきたれり』 | |
『汝らの力量を量りたく候。火の試練神殿イグレイン最深部まで来られたし』 | |
『逃げても責めはせぬ。うぬらが惰弱と判断するのみ』 | |
なんじゃこりゃ? | |
呼び出しだ。火の試練神殿に来いって | |
あからさまにケンカ売ってやがんな | |
誰なんだ、相手は? | |
気になるわね。『盟約の時』っていうのが | |
珍しいじゃないか。女の勘? | |
……かもね | |
わかった。行ってみよう |
エドナは気付いてたんだよね? フェニックスが本物のノルミンだって | |
まあね。フェイントをかけて振り返ると、結構な確率で目があったし | |
思いっきり目をそらすのよ、アイツ | |
こわっ! かなり不気味じゃない、それ? | |
というか、ムカつくわよね。ストーカー的な意味で | |
ひょっとして、それで逆さ吊りに? | |
フェニックスさんも使命感でしたことですから | |
じゃなかったら、磔にしてたわよ | |
そのフェニックスから、エドナちゃんへ伝言だぜ | |
『エドナ、汝は我から巣立った。飛べ、どこまでも高く』 | |
だとさ | |
うわ、上から目線……つか、意味不明? | |
とても情熱的な方なんですよ。ちょっと空気を読まないだけで…… | |
確かに前より高く飛べるかもね | |
ちょっとだけ傘が軽いもの |
あれ!? エドナの傘にフェニックスがついてる! | |
気にしなくていいわ。今度は本物の人形だから | |
どうされたのですか、それ? | |
フェニックスの置き土産よ。こんな手紙と一緒に | |
なになに…… | |
『この人形は、我が夜なべをしてつくりしものなり。これを身代わりに我がいない寂しさを埋めるがいい』 | |
『側にはおらぬが心配無用。我は不死鳥。汝の心にフェニックスはいつでも蘇る』 | |
まったく、お節介で面倒でくどいヤツよね | |
でも、つけるんだ? | |
なにもないと傘のバランスが気持ち悪いからよ | |
繊細なのよ。意外に | |
はい | |
繊細だね |
スレイ、マルトランが逆って―― | |
鈍いわね。ニブミボ | |
アリーシャとだって今言おうとしてた | |
しかも言いにくい。いい加減にしなさい。ミブニボ | |
話を聞いてくれ…… | |
対照的なのが悪いわけじゃないけど | |
きっかけや境遇は異なっても、目指したものが同じだったのでしょう | |
自ら望んで王族の責務を果たそうとし、思うようにいっていないアリーシャと | |
強いられ、望んでもいない騎士となり、功績を挙げ尊敬を集めているマルトラン、か | |
うまくいかないこともあるだろうな | |
そう感じているかもね。その二人も |
マルトランってローランスにもその名が響いてるんだな | |
そんだけの武功を立ててるって事 | |
何よりあの人目立つじゃない? | |
まぁね | |
師弟共々目立ちすぎ | |
あはは。あの二人似てるからなぁ | |
え? アリーシャとマルトランが? | |
僕たちは真逆だと感じていたが…… | |
ええ〜? | |
二人とも王宮でちょくちょく見たけどさ | |
なんていうか……どっちも余裕ないっていうか、必死すぎっていうか | |
確かに…… | |
でしょ? 師弟だって知って納得ってかんじ | |
可愛さあまって憎さ100倍 | |
え? なんで? | |
頭によぎっただけ。理由なんてないわ | |
…… |
マルトランが憑魔化した味方に襲われていた……戦功が嫉妬されたのか? | |
人は敵以上に秀でた味方をも憎悪するものですわ | |
戦争で士官が命を落とす理由のひとつだね | |
たまったものじゃないな | |
けど、マルトランって生きているのよね? | |
何があったんだろう…… |
マルトランが憑魔化した味方に襲われていた……戦功が嫉妬されたのか? | |
人は敵以上に秀でた味方をも憎悪するものですわ | |
戦争で士官が命を落とす理由のひとつだね | |
たまったものじゃないな | |
けど、マルトランって生きているのよね? | |
何があったんだろう…… | |
その時にマルトランは憑魔になったのかもしれないな | |
前から憑魔だったってのも考えられるよね | |
あの人が穢れたワケもわかんないし、力も普通じゃないし | |
確かに……マルトランさんの放った強い穢れが、周囲の穢れを強め、兵士達を憑魔とさせたのかもしれません | |
『タマゴが先かニワトリが先か』考えても無駄よ | |
どっちにしろ、アリーシャに出会った時、あの人はもう憑魔だったんだよな…… | |
……辛いことですね。アリーシャさんにとって | |
も〜! みんなネガティブすぎ! | |
そんな憑魔の近くにいて穢れなかったアリーシャはすごいってことだよね! | |
うん。前向きに考えないと、だよな | |
そうそ。タマゴでもニワトリでも、どっちも美味しく食べられるんだから! | |
それは……前向きなのかわかんないけど |
スレイ。枢機卿の事想い出してたっしょ | |
……一瞬だけ | |
迷っちゃうなら、どっかの宿で待ってれば? あたし、片付けとくし | |
何言ってんだ。ロゼだけじゃ浄化できないだろ | |
けど、殺れる | |
そんなの……! | |
スレイ、迷ってたらその隙につけ込まれちゃう | |
敵を気遣ったせいで、仲間が傷つくなんて絶対イヤ | |
……つまりオレは邪魔だって言うのか | |
そ | |
待ってくれ、ロゼ。スレイは! | |
ミクリオさん、ここは | |
……もう迷わないから | |
別に迷うなって言ってんじゃないけど | |
やるってんならしっかりやろ | |
ああ | |
……なんだよ。気を遣った僕がバカみたいじゃないか | |
ふふ、そんなことはありませんわ | |
『みたい』じゃないってことよね | |
違いますよ! | |
違うだろ!? |
スレイ。枢機卿の事想い出してたっしょ | |
……一瞬だけ | |
迷っちゃうなら、どっかの宿で待ってれば? あたし、片付けとくし | |
何言ってんだ。ロゼだけじゃ浄化できないだろ | |
けど、殺れる | |
そんなの……! | |
スレイ、迷ってたらその隙につけ込まれちゃう | |
ザビーダも言ってるでしょ | |
敵を気遣ったせいで、仲間が傷つくなんて絶対イヤ | |
……つまりオレは邪魔だって言うのか | |
そ | |
待ってくれ、ロゼ。スレイは! | |
ミクリオさん、ここは | |
……もう迷わないから | |
別に迷うなって言ってんじゃないけど | |
やるってんならしっかりやろ | |
ああ | |
……なんだよ。気を遣った僕がバカみたいじゃないか | |
ふふ、そんなことはありませんわ | |
『みたい』じゃないってことよね | |
違いますよ! | |
違うだろ!? |
まさかメデューサ種の正体って…… | |
どっちも枢機卿の姉なのかもね | |
あるのか? そんな偶然が | |
本人に聞いてみるしかないよね。ホントのことは | |
どうやって? | |
それは……故郷に帰ってる気がする | |
それも勘か? | |
ま、ね。そういうものだよ、人間って | |
……まあ、心理的には可能性はあるが | |
くくく、一理の半分くらいはありそうだ | |
それにロゼの勘って当たるしな | |
ですが、今は無理ですわ。グレイブガント盆地は閉鎖されていますから | |
機会を待つしかないか…… |
まさかメデューサ種の正体って…… | |
どっちも枢機卿の姉なのかもね | |
あるのか? そんな偶然が | |
本人に聞いてみるしかないよね。ホントのことは | |
どうやって? | |
それは……故郷に帰ってる気がする | |
それも勘か? | |
ま、ね。そういうものだよ、人間って | |
……まあ、心理的には可能性はあるが | |
くくく、一理の半分くらいはありそうだ | |
それにロゼの勘って当たるしな | |
場所はグレイブガント盆地の奥でしたね。行ってみてはどうでしょう? | |
そうだな |
やりきれないな。枢機卿たちは、どう生きても憑魔になるか、死ぬしかない運命だったのか? | |
それは…… | |
運命というものは確かに存在します | |
ですが、すべてが決まっているなんて思いたくありませんわ | |
運命とかって考えた事ないなぁ | |
みんな白と黒のギリギリで生きてる。どう転ぶかなんてわかんない | |
あの姉妹達はみんな黒の方に進んだ。だから憑魔になった。そんだけでしょ | |
白か黒かは自分で選べる? | |
当然でしょ? 自分の人生だよ? | |
スレイさん | |
ああ。ロゼの言う通りだな |
ふん。しょうもないヤツらだったな。レディレイクのガキども | |
……社会に爪弾きにされた子どもは、犯罪でもしないと生きていけないのかな…… | |
本当に……悲しい時代ですわ | |
ざけんじゃねぇ | |
罪を犯してまでも前に進もうとしてるヤツは、罪を背負う覚悟で進む。影を胸に落として顔を上げる | |
あのガキどもはそうじゃねぇ。ただ堕落しただけだ | |
そんな話しながらこっちみんな! | |
ロゼ……そこまで考えてたんだな…… | |
あたしはそんな、頭使ってないから! もうこの話はやめ! | |
天然だというのか……すごいな…… | |
はい。どんな境遇であろうと生き方と、それに伴う責任は本人が決める事…… | |
それを自然に理解しているロゼさん……本当にすごいですわ | |
ああもう! 何これこの流れ! | |
あの子たちも突き放された事で、とらなきゃならない責任に気付いたんじゃないか | |
スレイ、ロゼ、君たちのおかげでね | |
……そうだといいな | |
うん | |
……そんな簡単なら、災厄の時代はとっくに終わってるけどね | |
…… |
しっかし、あのレディレイクのガキども、ぶっ飛んでたな。最近はみんなああなのかねぇ | |
……社会に爪弾きにされた子どもは、犯罪でもしないと生きていけないのかな…… | |
本当に……悲しい時代ですわ | |
関係ねぇだろ | |
あのガキどもは泥すすってでも生きてるヤツの気合いに、砂かけてるようなもんだ | |
ただぬるいだけだっての。なぁ? | |
そんな話しながらこっちみんな! | |
ロゼ……そこまで考えてたんだな…… | |
あたしはそんな、頭使ってないから! もうこの話はやめ! | |
天然だというのか……すごいな…… | |
はい。どんな境遇であろうと生き方と、それに伴う責任は本人が決める事…… | |
それを自然に理解しているロゼさん……本当にすごいですわ | |
ああもう! 何これこの流れ! | |
あの子たちも突き放された事で、とらなきゃならない責任に気付いたんじゃないか | |
スレイ、ロゼ、君たちのおかげでね | |
……そうだといいな | |
うん | |
……そんな簡単なら、災厄の時代はとっくに終わってるけどね | |
…… |
うーん…… | |
明日は雨ね | |
え? なんで? | |
あなたが頭使おうとしてるから | |
慣れないことを無理にしなくていい、ロゼ | |
あんたら、あたしをなんだと思ってんだ! | |
ふふふ | |
で、何うなってたんだ? ロゼ? | |
んとね、まさにボス! って強い憑魔もいっぱい倒したじゃない? | |
けど、なんかさ、足りないんだ | |
もっと強くなりたいと? | |
正確には……決め手かな | |
そんなのなくても、ロゼは十分強いじゃないか | |
くく、戦いに生きたヤツにしかわからねぇかもな | |
やるべき事のために強さの確信が欲しいって気持ち | |
やるべき事のため…… | |
強さの確信、か | |
…… | |
ロゼさん……強さを求める心は穢れを生む事もあります | |
! | |
…… | |
ロゼ、さっきも言ったとおり、君は慣れない事はしなくていい | |
ティンタジェルで君は僕の言葉に耳を傾け、そして自ら何かを感じ、答えを出したじゃないか | |
君は考えるより感じろだ。そうだろう? | |
へぇ。ミク坊にしちゃ粋なアドバイスだな | |
俺様もそれに一票 | |
こんな時には初心に返れ、だな | |
いいんじゃないか? 僕らが初めて会ったのはレディレイクだな | |
ライラとも出会う前だったな | |
そうだったの。手が早いのね | |
それもいいね……みんな、ありがと! | |
ああ……私はホントに…… | |
ライラも。心配してくれてありがと | |
ロゼさん…… |
気苦労の種が芽吹いて、綺麗な花が咲きましたってか | |
ロゼの超必殺技の件? | |
心配症の虫がその花を食い散らすところだったじゃない | |
はい……私の老婆心で事を難しくしてしまいました | |
反省ですわ…… | |
はっはっは。ライラ先生はたまにやらかすところが魅力なんだろ | |
ううう…… | |
ザビーダ先生はもうちょっと、やらかさないようにして欲しいんだけど? | |
たは〜! エドナ先生にいわれちまうとは! | |
どうなの? ミクリオ先生? | |
なんなんだ、これは……僕は先生じゃない | |
ミクリオ先生は最初にロゼさんを見いだした時点で大金星ですわ | |
あれはロゼが自分で決めたんだ。今回のこともね。それと、僕は先生じゃない | |
ですが先生…… | |
先生じゃないって言ってるだろう! | |
エドナ先生〜……ミクリオ先生が反抗期ですわ〜 | |
生意気ね。ミクリオ先生のくせに | |
んん。いかんぞ。ミクリオ先生 | |
……ライラの心配はもっともだった。あの時ライラが問題提起してくれて良かったと思う | |
君たちほどの経験がない僕らは、本当に君たちに助けられているんだから | |
ミクリオ先生! | |
ミクリオ先生が治った! | |
生意気ね。ミクリオ先生 | |
まじめに返しても断ち切れなかったか…… |
んん……? | |
あれ……ライラ? | |
どうかした? | |
あ、起こしちゃったか。ごめん | |
で? | |
ライラが居ないみたいなんだ | |
何かあったのかな…… | |
ふむ…… | |
別に気にしなくていいと思うよ | |
けど…… | |
ライラにだって見られたくない姿もあるよ、きっと | |
…… | |
これまで苦しかった時もライラは一人で……? | |
そうだったんじゃないかな | |
気付かなかったなんて…… | |
気付かせないようにしてたんだよ | |
ひとりにさせたげなって | |
あら、もう起きたんですの? 二人とも | |
あ、ライラ、大丈夫? | |
はい? | |
気付いたら居ないんで心配したって | |
まぁ。少し散歩していたんですの | |
心配かけてごめんなさい | |
謝るようなことじゃないよ | |
……ちょっと二人とも。不器用過ぎて見てらんない | |
え? | |
スレイ、ライラは子どもじゃないんだよ? | |
ライラにとって仲間って何なのかな? | |
! | |
! | |
いっぺん初心に戻ってみたら? この街から始まったんでしょ? | |
想い出の場所に行ってみるとかさ | |
…… | |
…… | |
ふむ…… | |
くくく | |
世話の焼ける…… |
それにしてもキレイだよな、瞳石って | |
けど、キレイすぎるんだ | |
だから、大半の人間はガラスかなにかの加工品だと思っているようだね | |
なるほどな。実際はなんなんだろう? | |
自然の鉱物じゃないわね | |
おそらく、複数の天響術を掛け合わせて生成したんだろう | |
その上、過去を見せる仕掛けが組み込まれているなんて、信じられない代物だな | |
好きな過去を自由に見れたらいいのにな。1000年くらいの歴史を全部見てみたいよ | |
見るだけで1000年かかるぞ。長生きしないとな | |
あ、そうか! | |
天族でも、さすがに無理でしょうね | |
瞳石も遺跡も、過去の断片にすぎないよ。そこから読み取ったものが重要なんだ | |
『歴史とは、僕らが心に築く建築物なのだから』 | |
ミクリオ! いいこと言った! | |
だろ? いつか本を書いた時、使おうと思ってるんだ | |
そんな野望があったのね | |
いや、僕らの旅を後世に伝えないのはもったいないだろう? | |
私も読んで見たいですわ、ミクリオさんの本 | |
進呈するよ。サイン付きでね | |
くそ〜、オレも考えないと! いいセリフとサイン! |
………… | |
特訓か? ミクリオ | |
特訓? なんのことだ? | |
そっか | |
にしても長い旅になったよな。出発の時は思いもしなかった | |
覚えてるか? イズチを出た時のこと | |
忘れるわけないだろ。あんなに輝いてた世界をさ | |
今は……どう見えるだろう? | |
どうだろうなあ…… | |
見てみないか? イズチに行って | |
……そうだな。行ってみるか |
くか〜 | |
すぅすぅ | |
…… | |
微笑ましく眺めてるって顔じゃないね | |
……見つけた答えを信じると頑張ってるお二人が、無理をなさってないかと | |
アイゼンの事か | |
……はい | |
無理してるに決まってるだろ | |
いくら自分で決めたからって、ホントは嫌な事だったんだ | |
……そうだな | |
けどま、しょうがねぇ。決めちまったのも事実だ | |
ザビーダさん…… | |
ザビーダ……君も…… | |
ふぅ | |
導師様ご一行、俺様は大したもんだと思ってんぜ? | |
嫌な事だからって逃げずに、ちゃんと応えたんだからな | |
ザビーダ…… | |
ったく……言わせんなって、こんな事 | |
そうですね……そうでした | |
そうゆうこと | |
どういうことだ? | |
わからないの? ミボ。まだまだ子どもね | |
エドナ!? | |
ミクリオさん、心配するのではなくて――ムググ! | |
しゃべりすぎ | |
これ宿題な、ミク坊 | |
何がなんだか…… | |
ふふ。ミクリオさんは、ずっと前に気付いているはずですわ | |
? これがさぱらんということか…… |