さっきの人も雷にやられたのかな? | |
順番が逆だ。あの人間のせいで雷が発生したんだ | |
さっきの雷、やっぱジイジだよな | |
ああ、侵入者への警告だね。これ以上踏み入るなって言う | |
…… | |
ごめん……ジイジ | |
やっぱり放っとけない | |
やれやれ。珍しく色々起こる日だよ |
面白い石碑が見つかったな | |
今日は収穫が多いね | |
あの石碑……遺跡に比べて新しかったよな | |
ああ。まったく年代が違ったね | |
内容、なんか助言みたいだった | |
先にここを訪れた何者かが残した、探索の標というところか | |
オレたち以外にもいるんだな。遺跡を調べてる人が | |
多分、冒険家、探検家……そう呼ばれる人間だろう | |
探検家かあ…… |
ホントすごいよ。この橋。どうやったんだろ? | |
こんなもの、人間の技術じゃ作り出せないはずだ | |
ってことはこの橋だけは『神代の時代』ぐらい古いものってことか? | |
どうかな……いずれにせよ | |
僕たちのような者に頼んで力を借りたのは間違いないだろう | |
そこまでしてあっち側に人を入れたくなかったんだ | |
この先はイズチに繋がってる。聖域を守るためには当然とも言えるね | |
昔、神殿へ祈りに訪れた人々も、断崖を渡れないと思い込まされたんだろうな | |
さっきまでの僕たちのように、な |
ホントすごいよ。この橋。どうやったんだろ? | |
こんなもの、人間の技術じゃ作り出せないはずだ | |
ってことはこの橋だけは『神代の時代』ぐらい古いものってことか? | |
どうかな……いずれにせよ | |
僕たちのような者に頼んで力を借りたのは間違いないだろう | |
そこまでしてあっち側に人を入れたくなかったんだ | |
この先はイズチに繋がってる。聖域を守るためには当然とも言えるね | |
昔、神殿へ祈りに訪れた人々も、断崖を渡れないと思い込まされたんだろうな | |
さっきまでの僕たちのように、な | |
けど、よく気付いたね、スレイ | |
君の直感にも感心させられるよ | |
お? | |
ごくごく稀にね | |
褒めてくれたと思ったら、これだ |
すごいツノ……伝説に聞くドラゴンのようだ | |
ははは、ドラゴンってお伽噺の? 君って面白い人だな | |
近づいたら危険だ! 気が荒い野生種だろう…… | |
大丈夫。友達だから。小さい頃は四、五回吹っ飛ばされたけどね | |
友達……なのか? | |
うん。時々ミルクを分けてもらって、村のみんなとチーズやヨーグルトをつくるんだ | |
それは楽しそうだ | |
楽しいよ。すごく |
あ! イズチヒバリの雛がいない | |
落っこちた雛を育てようとしたら、ジイジにとめられたんだよな | |
『人が育てたら、飛べない鳥になってしまう。巣に戻せ』って…… | |
あいつ……無事に巣立てたんだな |
スレイ、君の剣は面白い太刀筋だな | |
なんという流派なんだ? | |
え? 流派…… | |
あるだろう? 師匠やその系統を表す名前が | |
そういうことなら……オレは『ウリボア流』だな! | |
ウリボア流!? | |
オレは飯のため、ウリボアは生きるために毎日、必死の真剣勝負だったんだ | |
自然の中で生きているのだな。君は…… | |
その毎日がオレに戦い方を教えてくれた | |
だからウリボアがオレの師匠で恩人 | |
だからウリボア流? | |
そう! | |
あ。恩人じゃなくて、恩ウリボアだな | |
ふふふ |
良い眺めだな〜! なんか空気も違う感じがする | |
ジイジの加護領域とは違う感覚だね | |
下界は穢れで満ちてるって話だったけど、なんか感じる? ミクリオ? | |
……それほど穢れてるって印象もないね | |
だよな。こんなに綺麗なんだし | |
見た目じゃ計れないものだろうが……今はこの景色を楽しむのも悪くない | |
ミクリオも下界初めてだもんな。ワクワクしてるんだろ? | |
いいよ。そういうことにしても |
ジイジの領域を感じなくなった…… | |
森を出たからな。いよいよここからが冒険の本番だね | |
ああ。まずアリーシャを見つけて、狙われてる事を伝えよう | |
んで、狙ってるキツネ男もやっつける! | |
憑魔との戦いはなるべく避けるべきだ | |
でも……! | |
マイセンの仇を討ちたいのは僕も同じだ | |
だが、穢れをどうにもできない僕たちはヤツを倒せない | |
それどころか退ける事もできるかどうか | |
……もうジイジの助けはないんだもんな | |
わかったよ。ミクリオ |
見ろよ、ミクリオ! この蝶! | |
ふむ。ヒメウスバシロチョウの仲間だろうか? | |
こんな蝶、初めて見た! | |
当然だろう。下界は動物も植物も、イズチよりずっと種類が多い | |
つまり、知らないものばかり! わくわくするよなあ | |
忘れるなよ。同時に憑魔も多いってこと | |
憑魔か――ジイジは穢れに染まると、あらゆるものが憑魔になるって言ってたけど | |
この蝶も……? | |
穢れれば、そうなんだろうな | |
う……想像したら、ちょっと怖くなってきた | |
それぐらいが丁度良い。慎重に行こう |
でっけえー! 水車って、水の力で小麦を挽くんだよな? | |
それだけじゃない。脱穀や製糸などにも利用しているらしい | |
これだけの人間が生活しているんだ。色々大がかりな仕掛けが必要なんだろう | |
! | |
いつごろつくられたものだろう? | |
土台はずいぶん古い様式に見えるけど、水車の部分は結構新しいし―― | |
スレイ | |
ん? | |
水が、かなり穢れている | |
なんだって! | |
この穢れた水は街の縦横に流れているものだ | |
つまり……ジイジの言うとおり―― | |
人が穢れを生んでいるのか…… |
は〜、聖堂ってこんなに華やかなものなのか | |
さすがに導師伝承が残る街だね。それだけに気になる…… | |
加護領域を感じない | |
そういえば……イズチではジイジの加護を常に感じてたのに | |
ジイジが特別大きな力を持っているから、あれほどだったとしてもだ | |
この街はとにかく穢れが強い……。ちょっと気分が悪くなるぐらいだ | |
あ、大丈夫なのか? ミクリオ | |
まだね。正直長居するのは遠慮したくなってきてる | |
想像してたより憑魔も多いし | |
こんなに華やかな街なのにな…… | |
これが普通なのかもな。人の街では |
は〜、聖堂ってこんなに華やかなものなのか | |
さすがに導師伝承が残る街だね。それだけに気になる…… | |
加護領域を感じない | |
そういえば……イズチではジイジの加護を常に感じてたのに | |
ジイジが特別大きな力を持っているから、あれほどだったとしてもだ | |
この街はとにかく穢れが強い……。ちょっと気分が悪くなるぐらいだ | |
あ、大丈夫なのか? ミクリオ | |
まだね。正直長居するのは遠慮したくなってきてる | |
想像してたより憑魔も多いし | |
オレたちってホント無力だよな……。憑魔の姿が見えてるってのに | |
もどかしいけど……しょうがない。僕たちに浄化の力なんてないんだから | |
それに憑魔に憑かれてる人間にも理由がある。邪な心に付け入られてるのさ | |
こんなに華やかな街なのにな…… | |
これが普通なのかもな。人の街では |
オレ、導師になったんだなぁ | |
……穢れの源である災禍の顕主をなんとかしなきゃいけないなんて | |
聞いてすぐ受け止められる話じゃないな | |
なんか聞いたばかりって口ぶりだな | |
オレが寝込んでる間にライラに聞かなかったのか? | |
ああ | |
お話するつもりだったのですが、スレイさんと一緒でいいとおっしゃって | |
ずっと本を読んでいらっしゃいました | |
なんで? | |
その方がライラの手間を省けるだろう | |
にしても、三日も本読んでたのか? せっかく街に居るんだから見てくりゃいいのに | |
別にいいだろう! 戦いで疲れていたし、本を読みたい気分だったんだ! | |
ミクリオ、昔っからそうだよな | |
オレがケガして探険行けないときでも合わせたりさ | |
律儀なのですね。ミクリオさん | |
ホント。こんなので抜け駆けされたとか思わないのに | |
本が読みたかっただけって言ってるだろう。まったく…… | |
わかってるよ | |
ふふふ |
なかなか美味いよな! 宿屋の料理 | |
ああ。料理店を兼ねているのはいいな | |
一石二鳥だし、これからもお世話になりそうだ | |
ミクリオさんは、食事をなさるのですね? | |
はは、当たり前でしょ | |
いや。天族は食事をとる必要はない | |
ええっ!? ジイジたちもみんな食べてたじゃないか | |
あれは、スレイに人間らしい生活をさせるためだって言ってた | |
そうだったのか…… | |
僕が食べてたのは美味しいからだけどね | |
必要がないだけで味覚は同じですから。食事に楽しみを見いだす天族も多いですわ | |
人と親しい天族は特に | |
ライラは? | |
以前は……食べていましたが…… | |
じゃあ、また一緒に食べようよ | |
それがいい。長い旅になりそうだし | |
……はい。お言葉に甘えますわ |
なあ、ずいぶん経った気がしないか? イズチを出てから | |
もう帰りたくなったのかい? | |
そんなはずないだろ! 旅は始まったばかりなんだから! | |
どっちだよ | |
お二人は……イズチからいらしたのですか? | |
そう。オレたちの故郷なんだ | |
知っているのか? 山の上にある天族の村なんだが | |
え、ええ…… | |
いいところだよ。ライラにも見せてあげたいな | |
やっぱり帰りたいんじゃないか | |
違うって! けど、ジイジには色々説明した方がいいかなって | |
カミナリは覚悟するんだね | |
そ、それは勘弁だけど―― | |
これも縁なのでしょうか…… |
聖剣の祭壇……ここが導師の契約の場だったんだな | |
遙か昔の話ですが | |
剣って導師のシンボルなのか? | |
いえ? どうしてそう思うんですの? | |
イズチの遺跡で『聖剣を掲げる英雄』――導師の壁画を見つけたし、 | |
ライラだって剣に宿って導師を待ってたしさ | |
ふふ。必ずしも導師が剣を振るったわけではありませんわ | |
導師の剣は、災厄や穢れを斬り、未来を拓いて欲しいという人々の願いを表したものなのでしょう | |
希望の象徴…… | |
この剣は…… | |
その剣はちょっと変わったものですわね | |
儀礼剣だと思う。遺跡で見つけたんだ | |
だから刃がないのですね | |
護身には十分なんだ。ミクリオとの稽古にも便利だし | |
……必要以上に傷付けない剣なのですわね | |
未来を斬り拓くのは難しいかもしれないけどね | |
スレイさん、剣はあくまでも象徴です | |
何をもって何を斬るのか――それを識ることが大切なのですわ | |
わかった……答えを探してみる |
普通の人間には見えない怪物、憑魔が世界中に溢れている | |
これが災厄の時代の正体―― | |
はい。心の荒廃や異常気象も、すべて憑魔が原因なのです | |
災禍の顕主ってヤツが、穢れと憑魔を生みだしてるんだって | |
そいつを鎮めるのが導師の役目なんだ | |
従士の役目でもあるわけだね | |
スレイさんにも伝えましたが、まずは御自分の答えを見つけ出してください | |
世界を、人を、穢れをどうすべきなのか | |
使命に縛られず、アリーシャさんの素直な心に従って見極めて欲しいのです | |
しかし、我を出していいのでしょうか? 私は従士なのに…… | |
従士は、配下ではなく導師を助ける者です。遠慮なんて要りませんわ | |
うん。よろしく頼むよ | |
わかりました! そういうことなら、思うところは―― | |
ビシッと言わせてもらいます! | |
頼もしいですわ! | |
オレも言うけど……今……かすったよ、アリーシャ…… | |
す、すまない! 気合いが入りすぎた |
ふう……ちょっと一休みですわね | |
はい。それにしても―― | |
どうかされましたか? | |
いえ。改めて本当に天族がいるんだと思って | |
こうしてお話しできるなんて夢のようです | |
アリーシャも天遺見聞録を読んで、ずっと天族に憧れてたんだって | |
ふふ、私も嬉しいですわ。アリーシャさんとお話できるようになって | |
今思えば、あの時も本当にいたのだな。スレイの家族が | |
あの時……? | |
以前、始まりの村の手がかりを探して、スレイの故郷に迷い込んでしまったのです | |
その時、家族を紹介されたのですが、私はお芝居と思って、失礼なことを…… | |
そうですか。始まりの村を―― | |
平気だよ。みんな気がいいから | |
そう言ってもらえるとありがたい | |
ミクリオ様にも早く会えるといいのだが | |
うん……そうだね…… |
スレイ、弓の台座に何か書いてある。古代語のようだが……? | |
どれどれ。ええっと―― | |
『遺跡や遺物を気軽に持ち帰ったり傷付けちゃダメだからねっ!』 | |
『モチロン宝箱は別だけどー♪』 | |
やけに軽いノリですわね | |
いえ……盗掘と学術研究は、本来紙一重 | |
『行為の本質を見極めよ』という教えではないでしょうか? | |
こっちは重すぎですわ! | |
そういう解釈もできるけど、これは昔の人が残した冗談じゃないかなあ | |
なるほど……遺跡は人がつくったもの。古人も私たちと同じ人というわけか | |
深いものだな | |
本当に真面目なんですね、アリーシャさんは |