| 明日も早いよ。全員しっかり休むこと! | |
| ……やれやれね | |
| 旅は嫌いかい? | |
| 面倒よね。外に出たのは何百年ぶりだし | |
| 何百年ぶりとは、すごいな | |
| その間、ずっとレイフォルクに…… | |
| ええ。お兄ちゃんの帰りを待ってね | |
| 一緒に住んでたんじゃないの? | |
| お兄ちゃんは誰かさんみたいな冒険好きでね。しょっちゅう旅に出ていたのよ | |
| ワタシは子ども扱いで、いつも留守番。一応、お土産でご機嫌をとろうとしてたけど | |
| 冒険のお土産って、どんな? | |
| 遺跡で見つけたゴツイ神器とか、子どもっぽいリボンとか、妙なお守りとか | |
| 忠告はしたんだけどな | |
| へえ、いいじゃないか! | |
| そう思うのね、あなたも | |
| そっか。似てるんだ、スレイに | |
| ……かもね | |
| 全部昔の話だけど | |
| ……でもないさ |
| ザビーダ。あの話のことちゃんと聞かせて | |
| あの話って……告白の返事だっけ? | |
| 誤魔化さないで。言ったでしょ。お兄ちゃんと決着をつけるって | |
| そのままの意味さ。アイゼンとは、ちょいと因縁があってね | |
| それがどんな因縁か聞いてるの | |
| 『妹さんを僕にください』って言ったら殴られた | |
| ウソね | |
| けど、絶対やるだろ。アイツ? | |
| ……わかった。話す気はないのね | |
| くくく、アイツが心配するわけだ | |
| 本当は、どうなんですの? | |
| なにか頼まれたんじゃないの? エドナのお兄さんに | |
| さあて、どうだったかな? | |
| もしかして誓約なのですか? | |
| いやいや、そんな大したもんじゃないって | |
| けど、口にしないもんだろ。男の約束ってのは |
| マジで倒せたな、ドラゴン | |
| 大したもんだ。さすが俺様が見込んだ男だ | |
| わかってるよ。エドナのお兄さんのことだろ | |
| 気付いてるかもだが、ジークフリートで俺たちをアイゼンに撃ち込めば―― | |
| 穢れを切り離し、元に戻せるかもしれない | |
| だが、所詮は可能性だぜ | |
| 何発必要なのか……そもそも本当にできるのかすらわからねえ | |
| ああ。今じゃないってわかっているよ | |
| ……悪ぃ。余計な口出しだったな | |
| 世界中を探せば、別の方法があるのかもしれないけど…… | |
| そうだな | |
| だが、ヘルの野郎は待ってくれねぇだろうな | |
| 今やらなかったら、できなくなる | |
| 別に強制はしないぜ? | |
| ……独りでもやるから、だよな | |
| そういうこと |
| できたね。ささやかだけど | |
| ……うん | |
| スレイ。お前は、ばっちりけじめつけたんだ。思いつめんじゃねえって | |
| 大丈夫だよ、オレは | |
| 気にすんな。野郎も満足してるだろうしな | |
| あんたも? | |
| ……俺もさ | |
| けど、エドナは時間が必要かもしれないね | |
| はい。何百年も積み重ねた想いですから | |
| 『エドナは泣き虫だけど、芯は強い子だ』 | |
| それってアイゼンの? | |
| 知ってるだろ? 俺たちも | |
| ああ。だよな |
| スレイ、ちょっといい? | |
| いいけど……どうかしたの? | |
| どうもしないわ。気にしないで | |
| ……うん。わかった | |
| 顔を見たくないってことかな? | |
| だとしても、オレはエドナの言う通りにするよ | |
| 勘違いしないで。ただの個人的な理由よ | |
| 腫れているからじゃないでしょうか。目が | |
| そっか。あんなに泣いたからね | |
| それならいいんだが | |
| よくないぜ〜。背中で語る大人の色気に気付かなきゃな | |
| 黙りなさい、オヤジザビーダ。略してオジーダ | |
| はっは〜! 調子戻ってるじゃないの〜 | |
| ちょっと傷ついた | |
| ははは | |
| で、用事ってなんなの? | |
| 丁度いいから、今のうちにみんなに言っておこうと思って | |
| 一度しか言わないから | |
| ありがと | |
| ありがと | |
| えっと……二回言ったけど? | |
| ひとつはアイツの分だろ | |
| なあ、親友 |
| ……やりきれない | |
| ライラ、元に戻す方法は―― | |
| それは…… | |
| スレイ、ライラ、困ってる | |
| ……ごめん | |
| いえ、私こそ…… | |
| オレにもっと力があれば | |
| 図に乗るな。生き死にまで操れると思うのか? | |
| ……勘違いしたらダメだよな | |
| 妙な同情もだ | |
| そうだな。ボリスはなすべき仕事を果たしたんだ。自分の意志で | |
| あたしたちもやんなきゃ | |
| ああ。続けよう。オレたちにできることを |
| 変な感じの理由がわかったよ。この事件に殺気が感じられなかったからなんだ | |
| あの司祭、殺しを浄化とかぬかしてたな | |
| あいつは心の底から思ってたのね。あれが全部世界のためになるって | |
| だから穢れを生まず、憑魔にならなかった。これがもっとも恐ろしい事です | |
| どうしてあんなに心が歪んでしまったんだろう…… | |
| あの男、夢の中で天族に導かれたと言っていた | |
| それが原因かもしれないな | |
| そんな形のないものに…… | |
| ……実体の無いもの……幻……幻覚!? | |
| ! | |
| 不思議ちゃんが何かしたのかもね | |
| サイモンが何かしたんだとしても、絶対に罪の意識だけはごまかせない | |
| 人殺しは罪……どんな理由つけても。その罪の意識を感じないで殺めていたあいつは | |
| 怪物だったんだよ | |
| 弱ぇ奴、おっかねぇ奴、強ぇ奴、いろんなのがいるって事だな | |
| はい。そしてセルゲイさんのような方も | |
| ああ。わかってる |
| ロゼさん。結局、セルゲイさんの誤解を解かなかったんですね | |
| うん、なんかね。セルゲイが、がっかりするかなって | |
| オレもそう思った | |
| セルゲイにとって、スレイとロゼは、守りたい世界の象徴なのかもしれないな | |
| 見てるのかねえ。自分がなくしちまった家族ってやつを | |
| 嘘ついちゃうけどさ、もうちょっと黙っておこうよ | |
| はい。いいと思いますわ | |
| いっそ本当にしちゃう気はないわけ? | |
| ははは! それはないって | |
| あはは! それはないっしょー | |
| ほんと見事なコンビネーション | |
| とにかく! やるべきことをやろ! そしたら―― | |
| 笑って本当のことを話せる日がくるよな。きっと |
| お姫様ってのも楽じゃないね | |
| 国や政治とは、人の思惑が絡み合ったクモの巣のようなもの | |
| 理想だけで渡ろうとすれば、絡め取られてしまうと思います | |
| けど……オレはアリーシャが間違ってるとは言いたくないよ | |
| アリーシャが頑張る理由を知ってしまったから余計にね | |
| 今の時代、アリーシャさんの純粋さは、とても貴重なものだと思います | |
| ですが、硬すぎる剣は意外に脆いものですわ | |
| うん。それに、アリーシャのは正論だから | |
| 正論じゃダメだっていうのか? | |
| 正しいこと言われて自分が間違ってるの気付いたら、かなり『くる』じゃない? | |
| そしたら、ヘコむか逆ギレしちゃうっしょ | |
| ……相手も人間だもんな | |
| 結果、あの娘が正論を説くほど、自分のいびつさを知る者はあの子に敵意を持つ | |
| そういう事ね | |
| 正しいはずなのに敵意を持たれ…… | |
| またアリーシャはそれに真っ向からぶつかり、より強い敵意を生んでしまっているのか | |
| んで悩んじゃってる | |
| ……苦悩の連鎖だ | |
| ……つらいな。アリーシャも | |
| ですが、アリーシャさんの想いが間違っているとは思いませんわ | |
| ただ、見極める必要はあるのではないでしょうか? | |
| アリーシャだけじゃなくオレも見極めなきゃな |
| お姫様ってのも楽じゃないね | |
| 国や政治とは、人の思惑が絡み合ったクモの巣のようなもの | |
| 理想だけで渡ろうとすれば、絡め取られてしまうと思います | |
| けど……オレはアリーシャが間違ってるとは言いたくないよ | |
| アリーシャが頑張る理由を知ってしまったから余計にね | |
| 今の時代、アリーシャさんの純粋さは、とても貴重なものだと思います | |
| ですが、硬すぎる剣は意外に脆いものですわ | |
| うん。それに、アリーシャのは正論だから | |
| 正論じゃダメだっていうのか? | |
| 正しいこと言われて自分が間違ってるの気付いたら、かなり『くる』じゃない? | |
| そしたら、ヘコむか逆ギレしちゃうっしょ | |
| ……相手も人間だもんな | |
| 結果、あの娘が正論を説くほど、自分のいびつさを知る者はあの子に敵意を持つ | |
| そういう事ね | |
| 正しいはずなのに敵意を持たれ…… | |
| またアリーシャはそれに真っ向からぶつかり、より強い敵意を生んでしまっているのか | |
| んで悩んじゃってる | |
| お姫様にゃ、ちと重い荷物だねぇ | |
| ……つらいな。アリーシャも | |
| ですが、アリーシャさんの想いが間違っているとは思いませんわ | |
| ただ、見極める必要はあるのではないでしょうか? | |
| アリーシャだけじゃなくオレも見極めなきゃな |
| マルトランの正体を伝えられなかったのは | |
| 信じたいって思ってるけど、『本当は信じてない』からなのかな…… | |
| あれは、ただの挑発だ…… | |
| ………… | |
| アリーシャには伝えないでおこう | |
| いいのね? | |
| ああ | |
| 僕も賛成だ | |
| マルトランの目的は、アリーシャに危害を加えることではなさそうだしな | |
| それなら、ワタシの言うことはないわ | |
| ロゼも伝える必要ないって思ってるだろ | |
| マルトランに啖呵切ってたしね | |
| あはは。スレイ、もう話さないって気配だったから、あいつの挑発につい先走っちゃったぜ | |
| …… | |
| ……正直、今のアリーシャに本当のことを伝えるのが不安なんだ | |
| アリーシャさんは想像以上に、マルトランさんを支えにしていますからね | |
| どっちでもかまわんが、マルトランと戦る時は躊躇するなよ | |
| 死ぬぞ | |
| ……ああ。それもわかってる | |
| そんな深刻にならなくても大丈夫だって! | |
| ほら、決めた事に胸をはれっての! | |
| ああ |
| マルトランの正体を伝えられなかったのは | |
| 信じたいって思ってるけど、『本当は信じてない』からなのかな…… | |
| あれは、ただの挑発だ…… | |
| ………… | |
| アリーシャには伝えないでおこう | |
| いいのね? | |
| ああ | |
| 僕も賛成だ | |
| マルトランの目的は、アリーシャに危害を加えることではなさそうだしな | |
| それなら、ワタシの言うことはないわ | |
| ロゼも伝える必要ないって思ってるだろ | |
| マルトランに啖呵切ってたしね | |
| あはは。スレイ、もう話さないって気配だったから、あいつの挑発につい先走っちゃったぜ | |
| ……正直、今のアリーシャに本当のことを伝えるのが不安なんだ | |
| アリーシャさんは想像以上に、マルトランさんを支えにしていますからね | |
| 憑魔が人に混じってるなんざ普通なこった | |
| ま、あの美女とはこの先出会いそうだけどな。戦いの舞台でよ | |
| ……ああ。それもわかってる | |
| そんな深刻にならなくても大丈夫だって! | |
| ほら、決めた事に胸をはれっての! | |
| ああ |
| アリーシャ、なんか変わったね | |
| ああ。前より、いい女になったな | |
| 見極めたからでしょう。夢を実現させるためになにが必要かを | |
| その上で決めたんだな。政治家として生きることを | |
| ……ああ | |
| もしかして寂しい? | |
| まさか | |
| 信じられるよ。もうアリーシャは大丈夫だって | |
| こっちもいい男になったんじゃないの | |
| だろ? | |
| はは! | |
| おっと | |
| 言うねえ | |
| 言いますわね | |
| 言うじゃない |
| 風の骨……阿吽の呼吸だな | |
| そう? 家族みたいなもんだからかな | |
| 家族……か | |
| ブラドさんという方はロゼさんのお父上なのですか? | |
| ああ、先代団長ね。あたしを拾ってくれた人だよ | |
| 拾った……? | |
| あたし、北の方の戦場で迷子になってたらしいんだ | |
| オレと同じだ | |
| 天族も親はいませんわ | |
| そっか……みんなも | |
| けど、家族の感じはわかるよ | |
| 僕たちを育ててくれたジイジたちだ | |
| あたしも一緒。風の骨のみんなは、同じ道を選んでくれた家族なんだ | |
| いいの? 暗殺ギルドの道でも | |
| あたしは、よかったと思ってる。バラバラになるより、ずっと | |
| そう…… |
| 風の骨……阿吽の呼吸だな | |
| そう? 家族みたいなもんだからかな | |
| 家族……か | |
| ブラドさんという方はロゼさんのお父上なのですか? | |
| ああ、先代団長ね。あたしを拾ってくれた人だよ | |
| 拾った……? | |
| あたし、北の方の戦場で迷子になってたらしいんだ | |
| オレと同じだ | |
| 天族も親はいませんわ | |
| そっか……みんなも | |
| けど、家族の感じはわかるよ | |
| 僕たちを育ててくれたジイジたちだ | |
| あたしも一緒。風の骨のみんなは、同じ道を選んでくれた家族なんだ | |
| いいの? 暗殺ギルドの道でも | |
| あたしは、よかったと思ってる。バラバラになるより、ずっと | |
| そう…… | |
| よかった……か |
| やっぱ『マーボーカレーまん』、当たったでしょー | |
| 美味いもんなー! | |
| 二人ともお行儀悪いですわよ | |
| けど、あったかいうちに食べないとー | |
| 美味しくないもんなー! | |
| ゴクリ…… | |
| むかつくわね。一口よこしなさい | |
| ああ、分け合うのが仲間だろう | |
| みなさん、はしたないですわよ! | |
| ライラも食べるー? | |
| いただきますわ! | |
| はっ! |
| やっぱ『マーボーカレーまん』、当たったでしょー | |
| 美味いもんなー! | |
| 二人ともお行儀悪いですわよ | |
| けど、あったかいうちに食べないとー | |
| 美味しくないもんなー! | |
| むかつくわね。一口よこしなさい | |
| ああ、分け合うのが仲間だろう | |
| 俺様も十口! | |
| みなさん、はしたないですわよ! | |
| ライラも食べるー? | |
| いただきますわ! | |
| はっ! |
| さっきの依頼……受けるのか? | |
| うん。つか、もう受けたし | |
| ………… | |
| しかし、いいのか? 冷たい言い方だが、あの子たちは悪の片棒を担いでいたんだろう | |
| うん。だからこれは、無法の強盗を傭兵が成敗したって事になる | |
| でもあの子たちは仲間と必死に生きようとしてた | |
| 悪いことってわかってて、抜け出したいとも思ってた。そこにつけ込まれて裏切られ、殺された | |
| あの子たちは正しくなかったけど……。それで裏切ったヤツらが正しいって事にもならないよ | |
| それは…… | |
| ……ごめん。オレにはわからない | |
| 別に責めてるんじゃないよ。こっちもごめん | |
| それに、他人事じゃないしね | |
| ロゼ……? | |
| 心配すんなって! 当然、背景はしっかり調べるし | |
| 憑魔だったら導師の出番だぜ! | |
| ……わかった | |
| まずは黒幕を見つける、だな | |
| そういうこと | |
| そだ! あの子たちの世話をするよう、エギーユたちに繋ぎつけとくね |
| そだ。あと一個言っとくことあった | |
| ありがとね、スレイ | |
| え、なに? | |
| あたしに殺して欲しくないって思ってくれてること | |
| 後悔とかしてないけど、心配してくれるのは嬉しいよ | |
| ロゼの――風の骨の決意はよくわかった | |
| それでも、やっぱりオレの気持ちは変わらないよ | |
| ったく、頑固だなぁ | |
| お互い様だろ | |
| 敵には回したくないね | |
| よかったよ。ロゼがオレの従士で |
| ライラってジイジと知り合いだったのか? | |
| ゼンライってジイジの本名なの? | |
| ああ。イズチじゃ誰も呼ばないけど | |
| 以前、お会いしたことがあるんです。一度だけ | |
| な〜んか意味深な会話してたよね? あれなに? | |
| カカオチョコチョコみチョコチョコ! あわせてチョコチョコむチョコチョコ! | |
| このパターンか | |
| いつから知ってたの? スレイがゼンライの家族だって | |
| 赤折り紙、青折り紙、黄折り紙! 赤折り紙、青折り紙、黄折り紙! | |
| もー! 逆に気になるってー! | |
| 俺は別に。オレたちが困ることをジイジがするわけないし | |
| こっちがおかしなことをしたら、どれだけ雷を落とされるかわからないけどね | |
| 信じてるんだ | |
| ああ。ライラと同じくらいね |